ISBN:4044271011 文庫 米澤 穂信 角川スニーカー文庫 2001/10 ¥480
「灰色の青春」を愉しむ折木奉太郎は、しなければならない事は手短に、しなくても良い事は出来るだけしない、と省エネをモットーとしていた。
そんな時、逆らえない姉のすすめにより古典部に入部することになった奉太郎は、千反田えるという好奇心の塊のような女子生徒と出会い、様々な謎に巻き込まれていく。
お話は古典部員達が「氷菓」という古典部伝統の文集の謎を解いていく事を主軸としています。
最初は小さな謎の解決から始まり、あっと驚く事実が白昼にさらされていくカタルシスは、やはりミステリの醍醐味です。
ライトノベル(中高生をターゲットとした小説)らしからぬ謎の中核に含まれたテーマ、硬質な文章、それに乗っかる小気味良いキャラクタ達のやりとりは、全てが相まって味わい深いものとなっています。
「日常の謎」としてみると、いまいちパンチが弱い気もしますが(これは「さよなら妖精」にも言えますが)一つ世界観を作り出すためには絶対必要な要素だと思うんです。
最初で放り出さず、読み通して頂きたい。
著者曰く、コーヒー一杯分の値段である本書は、どれだけ味わいの深いコーヒーよりも、美味しい一冊でございます。
一冊目が読み過ぎてぼろぼろになったので、最近二杯目を頂きました。
「灰色の青春」を愉しむ折木奉太郎は、しなければならない事は手短に、しなくても良い事は出来るだけしない、と省エネをモットーとしていた。
そんな時、逆らえない姉のすすめにより古典部に入部することになった奉太郎は、千反田えるという好奇心の塊のような女子生徒と出会い、様々な謎に巻き込まれていく。
お話は古典部員達が「氷菓」という古典部伝統の文集の謎を解いていく事を主軸としています。
最初は小さな謎の解決から始まり、あっと驚く事実が白昼にさらされていくカタルシスは、やはりミステリの醍醐味です。
ライトノベル(中高生をターゲットとした小説)らしからぬ謎の中核に含まれたテーマ、硬質な文章、それに乗っかる小気味良いキャラクタ達のやりとりは、全てが相まって味わい深いものとなっています。
「日常の謎」としてみると、いまいちパンチが弱い気もしますが(これは「さよなら妖精」にも言えますが)一つ世界観を作り出すためには絶対必要な要素だと思うんです。
最初で放り出さず、読み通して頂きたい。
著者曰く、コーヒー一杯分の値段である本書は、どれだけ味わいの深いコーヒーよりも、美味しい一冊でございます。
一冊目が読み過ぎてぼろぼろになったので、最近二杯目を頂きました。
人の脳みそ、ほんに不思議なものですやい
2004年5月22日 昨日は、二時ごろ床につきました。
そして、ふと気づくと七時になったんですが、個人的見解をいえば「寝てない」んです。
寝た気がしない、が正確なところだとは思うんですが「寝てない」んです。
六時半ごろ目がうっすらさめて、こう思ったのだけは覚えてるんです。
「ああ、なんでそこで腹を気にして手を挙げないかな。だから俺が前に立たなきゃならなくなるんだよ。だから眠れなかったじゃないか!」
夢を見ていたわけではなく、本当に、心の底から突然そう思ったんです。
今も、なんだかむかついてます。得体の知れない(おそらく)人間が腹を気にして手を挙げなかったことに。そして、寝た気がしないんです……
一昨日もこんな夢中状態で、眠った気がしなかったんですが、これは不眠症とでも言うんでしょうか。なんか違う気もするけれど……
そのあと、知人のトルコ石さんと柔道をしている、これは本当に夢を見ました。彼は柔道をやっていたらしいので、それがなぜか思い起こされたのでしょう。
不思議な事に、朝起きたら体が痛いです。いったいなんなんでしょう。
寝る前にちょっと読んだ「ドグラ・マグラ」の作中論文「人間の脳髄は物を考えるところに非ず!」というのが、印象に残っていたのは確かですが。
そして、ふと気づくと七時になったんですが、個人的見解をいえば「寝てない」んです。
寝た気がしない、が正確なところだとは思うんですが「寝てない」んです。
六時半ごろ目がうっすらさめて、こう思ったのだけは覚えてるんです。
「ああ、なんでそこで腹を気にして手を挙げないかな。だから俺が前に立たなきゃならなくなるんだよ。だから眠れなかったじゃないか!」
夢を見ていたわけではなく、本当に、心の底から突然そう思ったんです。
今も、なんだかむかついてます。得体の知れない(おそらく)人間が腹を気にして手を挙げなかったことに。そして、寝た気がしないんです……
一昨日もこんな夢中状態で、眠った気がしなかったんですが、これは不眠症とでも言うんでしょうか。なんか違う気もするけれど……
そのあと、知人のトルコ石さんと柔道をしている、これは本当に夢を見ました。彼は柔道をやっていたらしいので、それがなぜか思い起こされたのでしょう。
不思議な事に、朝起きたら体が痛いです。いったいなんなんでしょう。
寝る前にちょっと読んだ「ドグラ・マグラ」の作中論文「人間の脳髄は物を考えるところに非ず!」というのが、印象に残っていたのは確かですが。
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澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。
2004年5月21日 音楽
fra-foa 三上ちさ子 CD トイズファクトリー 2000/11/01 ¥1,050
テレビでこの曲のプロモーションビデオが流れていたのは、今から三年も前。
丁度、自身が一番へこんでいる時期だったので、なんだかテレビの前で号泣していました。
クリーントーンのギターに合わせて静かに始まる三上ちさ子さんの声。
そのあと徐々に盛り上がる伴奏と、声量溢れる悲痛にすら聞こえる歌声に、打ちのめされました。
次の日自転車こぎこぎCDショップに行って購入、歌詞を読みCDをかけてまた号泣。
決してバラードではないのだけれど、ここまで染みてくる曲はもう生涯無い気がします。
「詩」というもののパワーを感じました。
この曲があったから、もしかしたら小説家なんて大それた場所を目指しているのかも知れません。
何か響けばいい、と削り削り、必死になってるんです。
詩って、ただ綺麗な言葉を選んでいくだけでは無いんだ、と知った曲でもあります。
バラードじゃないのに染みて、激しいのに優しい名曲です。
http://www.fra-foa.net/
試聴はできませんが、気になった方は是非。
テレビでこの曲のプロモーションビデオが流れていたのは、今から三年も前。
丁度、自身が一番へこんでいる時期だったので、なんだかテレビの前で号泣していました。
クリーントーンのギターに合わせて静かに始まる三上ちさ子さんの声。
そのあと徐々に盛り上がる伴奏と、声量溢れる悲痛にすら聞こえる歌声に、打ちのめされました。
次の日自転車こぎこぎCDショップに行って購入、歌詞を読みCDをかけてまた号泣。
決してバラードではないのだけれど、ここまで染みてくる曲はもう生涯無い気がします。
ただもし僕にも うたがうたえるなら
まだ生きてる事が 許されるなら
僕は僕のために 自分を削って燃やすよ
誰かの心に一瞬でも 響いたなら
僕はこの世界に 生まれてきて良かったんだね……?
〜中略〜
神様は 僕にこの「声」をくれた
きれいな花見られるこの「目」をくれた
「きれい」と感じられる心をくれた
それで僕はあの人に、何を返せた?
神様のくれた この体使って
生きてるこの喜びをうたうんだ
あの空の青さや 太陽の暖かさ
揺らめく木々の葉 こぼれる光
いつかは消えるのだろう
「生きている」愛しさや 悲しみやつらさまで受け止めるんだ
「詩」というもののパワーを感じました。
この曲があったから、もしかしたら小説家なんて大それた場所を目指しているのかも知れません。
何か響けばいい、と削り削り、必死になってるんです。
詩って、ただ綺麗な言葉を選んでいくだけでは無いんだ、と知った曲でもあります。
バラードじゃないのに染みて、激しいのに優しい名曲です。
http://www.fra-foa.net/
試聴はできませんが、気になった方は是非。
赤ちゃんと僕 (18)
2004年5月21日 読書
ISBN:4592128281 コミック 羅川 真里茂 白泉社 1997/09 ¥410
母親を交通事故で亡くした小学生の拓也は、幼稚園児の実(みのる)をまるで母親のように世話していきながら、成長していく。
漫画と言えば幼少の頃から姉の少女漫画をかっぱらって読んでいたので、少女漫画自体には抵抗が無いんですが、この本はそういう「抵抗」云々をすっとばして面白い。
羅川さんの著作は、人間が優しくて素敵なのです。
小学生の拓也が実を母のように世話する、と上に書きましたが、葛藤が無いはずがありません。なぜ自分だけ、という葛藤と戦いながら、成長していくのです。
少女漫画は生々しいと良く言いますが、この本は別に「あくの強い」生々しさはありません。ディフォルメされているけど、伝わってくる生々しさ、というか。心理描写が繊細なのかな。
一巻、二巻あたりはまだ見えませんが、後半になるにつれて、一話一話のテーマも深く、全てに救いがあり美しいです。読むなら、一巻から一〇巻辺りまで一気に読む事をオススメします。
友情、虐待、対人関係、思春期、色々考えさせられます。
テーマが深い、と言っても小難しいわけでは無いですけどね。一人一人のキャラクタがきちんとたっていて見せ方が「巧い」ですから楽しくて、飽きませんし。
ここまでクオリティの高い本を、私は未だ他に知りません。
好きな本は? と問われれば、もしかしたら色々な小説を投げ捨ててでも「赤ちゃんと僕です」と答えるかも知れない。
14巻、18巻はもう号泣です。
母親を交通事故で亡くした小学生の拓也は、幼稚園児の実(みのる)をまるで母親のように世話していきながら、成長していく。
漫画と言えば幼少の頃から姉の少女漫画をかっぱらって読んでいたので、少女漫画自体には抵抗が無いんですが、この本はそういう「抵抗」云々をすっとばして面白い。
羅川さんの著作は、人間が優しくて素敵なのです。
小学生の拓也が実を母のように世話する、と上に書きましたが、葛藤が無いはずがありません。なぜ自分だけ、という葛藤と戦いながら、成長していくのです。
少女漫画は生々しいと良く言いますが、この本は別に「あくの強い」生々しさはありません。ディフォルメされているけど、伝わってくる生々しさ、というか。心理描写が繊細なのかな。
一巻、二巻あたりはまだ見えませんが、後半になるにつれて、一話一話のテーマも深く、全てに救いがあり美しいです。読むなら、一巻から一〇巻辺りまで一気に読む事をオススメします。
友情、虐待、対人関係、思春期、色々考えさせられます。
テーマが深い、と言っても小難しいわけでは無いですけどね。一人一人のキャラクタがきちんとたっていて見せ方が「巧い」ですから楽しくて、飽きませんし。
ここまでクオリティの高い本を、私は未だ他に知りません。
好きな本は? と問われれば、もしかしたら色々な小説を投げ捨ててでも「赤ちゃんと僕です」と答えるかも知れない。
14巻、18巻はもう号泣です。
ピンチ
2004年5月20日 オール讀物推理新人賞に向けて推敲していた原稿が、どうも加筆修正を重ねたら、規定の枚数である一〇〇枚を越えそう。
どこも削りたくないけれど、どこか削らなければならなくなりそうな気配に、どきどきでございます。
新人賞、とくに短編における「規定枚数」というのは、かなり大きな存在です。
短編の賞は30〜100枚が主流なんですが、ミステリをこの枚数を書こうと思うと、かなり急ぎ足になってしまう。
文庫にして4、50ページで事件を起こして伏線を張って解決をしなければならない。出来ない事は無いのですが、ネタによっては苦しい事も。
たとえば一番辛いのが「一人称の考察」
一人称はつらつらと「どうしてその事に至ったのか」というのを書いていかなければならないので、どうしても枚数が嵩張ってしまう。三人称であれば「その時気づいた」とでも書いてやれば良いんですがね。
ミステリは、偶然をどれだけ理屈こねて必然にさせるか、とも言いますしね。
今回のお話はどうしても一人称でなければならないので辛いです。
しかも容疑者(?)一人一人に対して一つ一つの見解を書かなければならない。短編でやることじゃ無かった、と今更後悔。
まあいいです。がんばります。
昨年の雪辱を、はらしてやりますよ。一言も触れて頂けなかった宮部さん、待っているんだー!
どこも削りたくないけれど、どこか削らなければならなくなりそうな気配に、どきどきでございます。
新人賞、とくに短編における「規定枚数」というのは、かなり大きな存在です。
短編の賞は30〜100枚が主流なんですが、ミステリをこの枚数を書こうと思うと、かなり急ぎ足になってしまう。
文庫にして4、50ページで事件を起こして伏線を張って解決をしなければならない。出来ない事は無いのですが、ネタによっては苦しい事も。
たとえば一番辛いのが「一人称の考察」
一人称はつらつらと「どうしてその事に至ったのか」というのを書いていかなければならないので、どうしても枚数が嵩張ってしまう。三人称であれば「その時気づいた」とでも書いてやれば良いんですがね。
ミステリは、偶然をどれだけ理屈こねて必然にさせるか、とも言いますしね。
今回のお話はどうしても一人称でなければならないので辛いです。
しかも容疑者(?)一人一人に対して一つ一つの見解を書かなければならない。短編でやることじゃ無かった、と今更後悔。
まあいいです。がんばります。
昨年の雪辱を、はらしてやりますよ。一言も触れて頂けなかった宮部さん、待っているんだー!
ORANGE&BLUE
2004年5月20日 音楽
COIL サトウヨースケ オカモト・OK・サダヨシ CD テイチクエンタテインメント 2000/05/10 ¥3,000
本日はこれで決まりです。
宅録の王様COILのセカンドアルバム。
宅録というのは字の通り、自宅で全ての録音作業を行う事を意味します。
でも、音質はそんなに悪くないです。荒々しさ、というかアナログな感じが面白い。
ひと味もふた味も癖のあるオカモト氏のボーカル。サトウ氏の唸るギター。とにかく、全てに味がある。それも、濃ぃぃい味が。
そのぶん、COILで無ければ出来ないであろう、と思わせてくれる辺りがすばらしいのです。
親しみやすいメロディラインに、ちょっと捻くれたアレンジが加わって、へんてこでも味のある歌詞がイロドリを!
このアルバムは一生聞き通すのだろうなあ、と思うくらい飽きがこないのも不思議です。
にしても、この二人のライブは面白いです。
ギターとベース、ボーカルを二人は交代でやっていくので、コロコロ楽器を持ち替えて忙しそう。(最近はちょっと変わったけれど)
ドラム、ギター、ベースという地味なセッティングなので、一つ一つの技術が聞き取れて、美しくもありました。
ライブビデオは宝物です。
好きな曲はシングルから「追放と楽園」
あとは不覚にも泣いてしまった「White room」
これまたシングルから「カウンセリング&メンテナンス」一発録りとは凄い。
まだまだある「ドライブ」の荒々しさもたまりません。
つまり、まあ、もう全部好きです。
本日はこれで決まりです。
宅録の王様COILのセカンドアルバム。
宅録というのは字の通り、自宅で全ての録音作業を行う事を意味します。
でも、音質はそんなに悪くないです。荒々しさ、というかアナログな感じが面白い。
ひと味もふた味も癖のあるオカモト氏のボーカル。サトウ氏の唸るギター。とにかく、全てに味がある。それも、濃ぃぃい味が。
そのぶん、COILで無ければ出来ないであろう、と思わせてくれる辺りがすばらしいのです。
親しみやすいメロディラインに、ちょっと捻くれたアレンジが加わって、へんてこでも味のある歌詞がイロドリを!
このアルバムは一生聞き通すのだろうなあ、と思うくらい飽きがこないのも不思議です。
にしても、この二人のライブは面白いです。
ギターとベース、ボーカルを二人は交代でやっていくので、コロコロ楽器を持ち替えて忙しそう。(最近はちょっと変わったけれど)
ドラム、ギター、ベースという地味なセッティングなので、一つ一つの技術が聞き取れて、美しくもありました。
ライブビデオは宝物です。
好きな曲はシングルから「追放と楽園」
あとは不覚にも泣いてしまった「White room」
これまたシングルから「カウンセリング&メンテナンス」一発録りとは凄い。
まだまだある「ドライブ」の荒々しさもたまりません。
つまり、まあ、もう全部好きです。
祝「さよなら妖精」増刷
2004年5月20日 大きな本屋に行ってもなかなか見つからない「東京創元社」のハードカバーで、しかも新人の日常の謎系ミステリである「さよなら妖精」が増刷です!
http://diarynote.jp/item/4488017037.html
(ダイアリーノートさん、リンクタグが使えないのはどうかと思います)
だから私は本が好きなのですよ!
この、実力が優先される世界! 面白い物はそれなりに売れる世界!
認められる世界!
で、二版が欲しいと思ってしまう私は、何なのでしょう。
詳しくは「米澤穂信」で検索してみましょう。
http://diarynote.jp/item/4488017037.html
(ダイアリーノートさん、リンクタグが使えないのはどうかと思います)
だから私は本が好きなのですよ!
この、実力が優先される世界! 面白い物はそれなりに売れる世界!
認められる世界!
で、二版が欲しいと思ってしまう私は、何なのでしょう。
詳しくは「米澤穂信」で検索してみましょう。
暗いところで待ち合わせ
2004年5月19日 読書
ISBN:4344402146 文庫 乙一 幻冬舎 2002/04 ¥520
盲目の少女と、その少女の家に侵入した男との微妙な関係を描く。
なんて捻くれたお話だろう。
元々は「死にぞこないの青」の一エピソードであったらしいけれど、盲目の人に知られず同居する、という発想自体が考えつきそうで考えつかない面白さ。
それだけでこのお話は「勝ち」です。
少女と男と視点を行き来して、少しずつ互いの存在を確認し合っていく描写は、ある意味で恋愛小説なのですが、ここまで倒錯的な恋愛も無いなあ、ともはや感心してしまう。
でも、それが嫌ではないから、また面白い。
乙一さんのお話はこの「気味が悪いけど、嫌じゃない」感じの、少女漫画で言う「好きなのに嫌い」みたいなむず痒さが素敵です。
二人の関係に興味を全部持って行かれて、そのうち終盤にいたり、まるで考えていなかった方向へ物語が転がって、「やられた」と呟いてしまうのです。
意外と珍しい、一粒で二度美味しい小説ですよ、これは。
安くて手頃な量で面白いとくれば、読まないわけにはいきません。
盲目の少女と、その少女の家に侵入した男との微妙な関係を描く。
なんて捻くれたお話だろう。
元々は「死にぞこないの青」の一エピソードであったらしいけれど、盲目の人に知られず同居する、という発想自体が考えつきそうで考えつかない面白さ。
それだけでこのお話は「勝ち」です。
少女と男と視点を行き来して、少しずつ互いの存在を確認し合っていく描写は、ある意味で恋愛小説なのですが、ここまで倒錯的な恋愛も無いなあ、ともはや感心してしまう。
でも、それが嫌ではないから、また面白い。
乙一さんのお話はこの「気味が悪いけど、嫌じゃない」感じの、少女漫画で言う「好きなのに嫌い」みたいなむず痒さが素敵です。
二人の関係に興味を全部持って行かれて、そのうち終盤にいたり、まるで考えていなかった方向へ物語が転がって、「やられた」と呟いてしまうのです。
意外と珍しい、一粒で二度美味しい小説ですよ、これは。
安くて手頃な量で面白いとくれば、読まないわけにはいきません。
ISBN:4087020142 新書 乙一 集英社 2001/09 ¥950
ある事故で片方の眼球を一つ失った少女は、事故のショックで記憶も無くしてしまいました。
ぎくしゃくとする親子関係。記憶を失った少女を、我が子ではない、と嘆く母。
少女は「眼球移植」を受け、視力を回復します。しかし、記憶は戻りません。
時折ふと、移植した眼球に現れる光景がありました。前の持ち主の記憶だろうその光景を頼りに、少女は家を出ます。
乙一さん初の長編にして、傑作。
集英社の新書ということで、置いていないところが多いですが、文庫化されますので、そちらをどうぞ。
優しい文体でどこまでもグロテスクな風景描写は、最後まで読み解いた時、どこかもの悲しく感じます。
著者曰く――「切なさの達人」と呼ばれた自分を求めて買ってくれた人には申し訳ない作品――との事だけれど、角川スニーカーで出ていた色々な著作を上回る切なさが私の心には残りました。
眼球の記憶という謎も十分魅力的だけれど、少女の葛藤のほうも面白く感じました。なるほど記憶喪失とはこんな感じなのかな、と。
記憶喪失とは、一個人格の喪失であり、そして、記憶喪失の回復とは、やはり一個の人格が消える事を意味するのかも知れない。
読者としては、記憶を喪失してからの少女の視点を通じて、物語を見るので、記憶の回復は、イコール彼女の喪失であり、感情移入をすればするほど、ジレンマを覚えます。
デビュー作で「死体の一人称」という離れ業をやってのけた乙一さんらしいといえば、らしいですね。
グロテスクな描写がきついといえばきついので(個人的に、物語として必要だと感じましたが)そういうのが絶対に苦手な方にはお薦め出来ません。それ以外の方には、文句なくお薦めです。
ある事故で片方の眼球を一つ失った少女は、事故のショックで記憶も無くしてしまいました。
ぎくしゃくとする親子関係。記憶を失った少女を、我が子ではない、と嘆く母。
少女は「眼球移植」を受け、視力を回復します。しかし、記憶は戻りません。
時折ふと、移植した眼球に現れる光景がありました。前の持ち主の記憶だろうその光景を頼りに、少女は家を出ます。
乙一さん初の長編にして、傑作。
集英社の新書ということで、置いていないところが多いですが、文庫化されますので、そちらをどうぞ。
優しい文体でどこまでもグロテスクな風景描写は、最後まで読み解いた時、どこかもの悲しく感じます。
著者曰く――「切なさの達人」と呼ばれた自分を求めて買ってくれた人には申し訳ない作品――との事だけれど、角川スニーカーで出ていた色々な著作を上回る切なさが私の心には残りました。
眼球の記憶という謎も十分魅力的だけれど、少女の葛藤のほうも面白く感じました。なるほど記憶喪失とはこんな感じなのかな、と。
記憶喪失とは、一個人格の喪失であり、そして、記憶喪失の回復とは、やはり一個の人格が消える事を意味するのかも知れない。
読者としては、記憶を喪失してからの少女の視点を通じて、物語を見るので、記憶の回復は、イコール彼女の喪失であり、感情移入をすればするほど、ジレンマを覚えます。
デビュー作で「死体の一人称」という離れ業をやってのけた乙一さんらしいといえば、らしいですね。
グロテスクな描写がきついといえばきついので(個人的に、物語として必要だと感じましたが)そういうのが絶対に苦手な方にはお薦め出来ません。それ以外の方には、文句なくお薦めです。
ハーブティー
2004年5月18日 姉に飲まされました。
ハーブティーなんぞ、その辺りの道に生えている草を煎じたような、苦いか湯の味しかしないもんだろう、と思っていたんですが、これが意外に美味しい。
個人的に、ティーパックの紅茶よりもステキな味かも知れない。
気になったんで、姉に色々訊いてみると、ハーブティはなかなか味も効果も強くて、多く飲んだらいけない種類もあるんだとか。
確かに「薬草」という言葉があるくらいだから、言われてみれば納得です。
最近推敲のストレスで胃を荒らしていたので、続けて飲んでみるかな。
-すぐ追記-
胃とは関係ないんですが、昨夜唐突に鼻血が出ました。
どうも左の鼻の穴の粘膜が弱いらしいです。
寝ぼけ眼でティッシュ、ティッシュと探している間に、また眠ってしまったらしく、今鏡を見たら顔面血だらけ。
怖い。
ドグラマグラは上巻の半分。
スチャラカチャカポコを越えました。面白いけど、頭痛い。
ハーブティーなんぞ、その辺りの道に生えている草を煎じたような、苦いか湯の味しかしないもんだろう、と思っていたんですが、これが意外に美味しい。
個人的に、ティーパックの紅茶よりもステキな味かも知れない。
気になったんで、姉に色々訊いてみると、ハーブティはなかなか味も効果も強くて、多く飲んだらいけない種類もあるんだとか。
確かに「薬草」という言葉があるくらいだから、言われてみれば納得です。
最近推敲のストレスで胃を荒らしていたので、続けて飲んでみるかな。
-すぐ追記-
胃とは関係ないんですが、昨夜唐突に鼻血が出ました。
どうも左の鼻の穴の粘膜が弱いらしいです。
寝ぼけ眼でティッシュ、ティッシュと探している間に、また眠ってしまったらしく、今鏡を見たら顔面血だらけ。
怖い。
ドグラマグラは上巻の半分。
スチャラカチャカポコを越えました。面白いけど、頭痛い。
ユリイカ(EUREKA)
2004年5月17日 映画
DVD メディアファクトリー 2002/02/22 ¥4,935
バスジャック事件で生き延びた運転手と、乗客の兄妹が一緒に暮らし始める。
全編がほぼセピア調に色を落とされていて、どうなのかなあ、と思ったけれど単純に面白かった。
60%はシナリオと演出。40%は役所広司さんの演技力。そんなこんなで、個人的に100%楽しめるエンターテイメント作品でした。
深く考えてしまうと、ちょっと素直に楽しめない部分があるので(殺人に関する重い部分なので、気には掛かるけど)少々割り切って見た方がこれはお得。
監督、脚本、音楽を一任している青山真治さんの力の入り具合が、要所要所で感じられて、絵画を鑑賞しているようで面白かった。
たとえばこんなシーン。
部屋で勉強をさせられる兄妹。兄が部屋から逃走。それを追いかける従兄弟。ここでカットするのではなく、そのままカメラが窓まで移動して、外の景色を撮る。家から飛び出した二人を、そこからずっと写し続け、従兄弟が息を切らして部屋へ戻ってくる――というふうに、なんだか1シーン1シーンが心憎い。
3時間30分という大長編で、なかなかずっしりと重い内容なので(それほど暗くはない)気合いを入れて挑みましょう。
それほど損はしないと思います。
バスジャック事件で生き延びた運転手と、乗客の兄妹が一緒に暮らし始める。
全編がほぼセピア調に色を落とされていて、どうなのかなあ、と思ったけれど単純に面白かった。
60%はシナリオと演出。40%は役所広司さんの演技力。そんなこんなで、個人的に100%楽しめるエンターテイメント作品でした。
深く考えてしまうと、ちょっと素直に楽しめない部分があるので(殺人に関する重い部分なので、気には掛かるけど)少々割り切って見た方がこれはお得。
監督、脚本、音楽を一任している青山真治さんの力の入り具合が、要所要所で感じられて、絵画を鑑賞しているようで面白かった。
たとえばこんなシーン。
部屋で勉強をさせられる兄妹。兄が部屋から逃走。それを追いかける従兄弟。ここでカットするのではなく、そのままカメラが窓まで移動して、外の景色を撮る。家から飛び出した二人を、そこからずっと写し続け、従兄弟が息を切らして部屋へ戻ってくる――というふうに、なんだか1シーン1シーンが心憎い。
3時間30分という大長編で、なかなかずっしりと重い内容なので(それほど暗くはない)気合いを入れて挑みましょう。
それほど損はしないと思います。
E3と入2とX800
2004年5月16日 ゲーム 世界のゲームショウE3が開催中で、その手のページに速報がバンバンあがってますね。
最近はあまりやらなくなったとは言え、気になる話題です。
まず「ゼルダの伝説」だけはやらなければいけません。
新作発表されて、GCをやはり買うべきか、と思案中です。キラー7も出るしなあ。
バイオ4も凄まじいですね。あのグラフィックの美麗さ。リアルタイムであれだけ出来るんだなあ、と驚き。ショットガンで扉が壊れる処理なんて、どうなってるんでしょう。
グラフィックと言えば、PCゲームも、なんだかとんでもない事になってますね。
全てのオブジェクトが利用可能なエンジンが開発されただとかで、ハーフライフ2は面白そうだ。前記のエンジンだから実現できた、色々なものを引き寄せ、投げつけるグラビティガンを体験してみたい。
PCスペックがまったく足りませんがね……
スペックと言えば、ATIから新しいグラフィックチップが発表されましたな。
RADEON X800だったか。
これもとんでもない。ファイナルファンタジーのムービーがリアルタイムで動く感じというか、なにやら新しい技術がてんこ盛りらしいです。
五万前後という良心的らしい価格だそうな。
良心はどこに。
携帯ゲーム機は、任天堂に軍配があがるんじゃないかな、と思います。タッチパネルと二画面は面白そう。
PSPは、あのラインナップを携帯ゲームでやる意味がわからない。あの小さな画面で映画を見る意味もわからない。PSPだから、ってのがまるで無いわけですな。
最近はあまりやらなくなったとは言え、気になる話題です。
まず「ゼルダの伝説」だけはやらなければいけません。
新作発表されて、GCをやはり買うべきか、と思案中です。キラー7も出るしなあ。
バイオ4も凄まじいですね。あのグラフィックの美麗さ。リアルタイムであれだけ出来るんだなあ、と驚き。ショットガンで扉が壊れる処理なんて、どうなってるんでしょう。
グラフィックと言えば、PCゲームも、なんだかとんでもない事になってますね。
全てのオブジェクトが利用可能なエンジンが開発されただとかで、ハーフライフ2は面白そうだ。前記のエンジンだから実現できた、色々なものを引き寄せ、投げつけるグラビティガンを体験してみたい。
PCスペックがまったく足りませんがね……
スペックと言えば、ATIから新しいグラフィックチップが発表されましたな。
RADEON X800だったか。
これもとんでもない。ファイナルファンタジーのムービーがリアルタイムで動く感じというか、なにやら新しい技術がてんこ盛りらしいです。
五万前後という良心的らしい価格だそうな。
良心はどこに。
携帯ゲーム機は、任天堂に軍配があがるんじゃないかな、と思います。タッチパネルと二画面は面白そう。
PSPは、あのラインナップを携帯ゲームでやる意味がわからない。あの小さな画面で映画を見る意味もわからない。PSPだから、ってのがまるで無いわけですな。
オーディオと自分の頭との、小さな差違
2004年5月15日 コンセントをきちんとしたものに、アンプをしっかりした重い物に、スピーカーの位置はここだ、ケーブルの間に物を置かない等々、オーディオ機器は、こだわり始めるときりがない世界。
でも、なぜそんな面倒くさい世界に魅力を感じる人が多くいるのか。
それはやっぱり「反応」が面白いからなんだと思うんですよ。
自己満足、ではなく「反応」というところが、ポイント。
ケーブルを変えれば音が良くなり、位置を変えればまた音の感じが変わり、コンセントを変えたらクリアになる。
僅かながらも、これほど素直に反応がある世界も珍しいと思いませんか?
そして、反応があればあるほど、飽きる事はないでしょう。
人間の頭も、そんなオーディオの世界と似通っていると思うのですよ。
たとえば数年前の私にとって、太宰治の「人間失格」も武者小路実篤集も、面白いものに思えなかった。
けれど、いろいろな事を経験して、いろいろな事を考えて、今読み返してみると、まるで頭の反応が違うんです。
これは面白い。これは良い。なんてすばらしい。
そんなふうに頭が文字を認識しだしたのです。
文字は変わらずそこに居るのにですよ。頭がかわっただけで、まるで別物です。
CDという同じメディアを、どれだけいい音で再生するか、というオーディオ機器にも同じ事が言えませんか?
真空管のアナログな音が好きな人もいれば、デジタルなAVアンプが好きな人もいる。
人間も、そんなふうに割り切れれば、面白いのになあ。
私の頭は、なんだかアナログな気がします。切り替えが遅いもの。
暖かみのある音を出せれば良いのだけれど。
ちなみに私はオーディオマニアではありません。いい音で聞きたいとは思いますが、努力や環境で変わる頭とは違い、オーディオのほうはべらぼうなぼったくり屋さんですから。
そういえば、スピーカーは、聞けば聞くほど馴染んでくると言いますね。エージングだったかな。
不思議と、これも人間にあてはまったりしないでしょうか。
でも、なぜそんな面倒くさい世界に魅力を感じる人が多くいるのか。
それはやっぱり「反応」が面白いからなんだと思うんですよ。
自己満足、ではなく「反応」というところが、ポイント。
ケーブルを変えれば音が良くなり、位置を変えればまた音の感じが変わり、コンセントを変えたらクリアになる。
僅かながらも、これほど素直に反応がある世界も珍しいと思いませんか?
そして、反応があればあるほど、飽きる事はないでしょう。
人間の頭も、そんなオーディオの世界と似通っていると思うのですよ。
たとえば数年前の私にとって、太宰治の「人間失格」も武者小路実篤集も、面白いものに思えなかった。
けれど、いろいろな事を経験して、いろいろな事を考えて、今読み返してみると、まるで頭の反応が違うんです。
これは面白い。これは良い。なんてすばらしい。
そんなふうに頭が文字を認識しだしたのです。
文字は変わらずそこに居るのにですよ。頭がかわっただけで、まるで別物です。
CDという同じメディアを、どれだけいい音で再生するか、というオーディオ機器にも同じ事が言えませんか?
真空管のアナログな音が好きな人もいれば、デジタルなAVアンプが好きな人もいる。
人間も、そんなふうに割り切れれば、面白いのになあ。
私の頭は、なんだかアナログな気がします。切り替えが遅いもの。
暖かみのある音を出せれば良いのだけれど。
ちなみに私はオーディオマニアではありません。いい音で聞きたいとは思いますが、努力や環境で変わる頭とは違い、オーディオのほうはべらぼうなぼったくり屋さんですから。
そういえば、スピーカーは、聞けば聞くほど馴染んでくると言いますね。エージングだったかな。
不思議と、これも人間にあてはまったりしないでしょうか。
ISBN:4041004047 文庫 武者小路 実篤 角川書店 1966/11 ¥399
まさに私が読み終わった二つの話。
偉大なる作家を志す青年の、恋と友情の話が「友情」
この「友情」というのがまた、意味深く恐ろしくも美しい感情なのだ、と思わせる。
序盤に伏線を張って、最後にそれを解き明かしていく様は、ミステリにも通ずる気持ちよさがある。
私がどんな人物か、と問われれば、武者小路実篤の書く主人公のような人間だ、と言いたくなるくらい、感情移入が出来て、面白かった。
にしても、ぼろくそに言われる主人公が可哀想だ……
そして「愛と死」は、タイトルが示すとおり、愛と死をテーマに扱っていて、まさか泣くとは思わなかった。
友人(この友人と主人公の関係は「友情」に通ずるものがある)の妹に恋をし、相思相愛になった主人公は、友人から進められて巴里へ旅立つ事になった。
巴里へは半年間滞在する。無事、帰ってきたら結婚しようと友人の妹と約束を交わし旅立った主人公。毎日のように手紙を出し合う二人。
これで死がテーマと言えばわかってしまうでしょう。
最後、主人公が彼女の部屋を覗く場面でほろりと来てしまいます。というか、今も思い出して来てます。
もう一つ「愛と死」で興味深かったのは、主人公が巴里から帰ってきて言った言葉。
「巴里にいったところで、人間が居るだけであった」
そして巴里で僕は変わらなかった、と彼は言った。芸術はすばらしかったが、日本にも誇る人物は多くいて、という描写があったので、おそらく「人間が居るだけであった」というのは本当なのだと思う。
けれど、彼は成長したのだ、と言った。旅行中の手紙のやりとりで育まれた「愛」と、帰路の途中で知った「死」によって。
凄い衝撃を受けた。
平易なテーマだなあ、と思って読んでいたのに、一つ人間の大事な部分を知った気がした。
最近、成長という言葉が、どこか「自動詞」のように扱われているのに、憤慨する。
何もしないで、ただ「何か」を待つ人間を私は好きになれない。
かならず物事には「過程」があり「結果」がある。わかりきった事なのに、いまさら強く認識できた。
この「強く認識」出来る事が、創作物のすばらしさだと思う。
ああ、面白い。面白い。面白い!
まさに私が読み終わった二つの話。
偉大なる作家を志す青年の、恋と友情の話が「友情」
この「友情」というのがまた、意味深く恐ろしくも美しい感情なのだ、と思わせる。
序盤に伏線を張って、最後にそれを解き明かしていく様は、ミステリにも通ずる気持ちよさがある。
私がどんな人物か、と問われれば、武者小路実篤の書く主人公のような人間だ、と言いたくなるくらい、感情移入が出来て、面白かった。
にしても、ぼろくそに言われる主人公が可哀想だ……
そして「愛と死」は、タイトルが示すとおり、愛と死をテーマに扱っていて、まさか泣くとは思わなかった。
友人(この友人と主人公の関係は「友情」に通ずるものがある)の妹に恋をし、相思相愛になった主人公は、友人から進められて巴里へ旅立つ事になった。
巴里へは半年間滞在する。無事、帰ってきたら結婚しようと友人の妹と約束を交わし旅立った主人公。毎日のように手紙を出し合う二人。
これで死がテーマと言えばわかってしまうでしょう。
最後、主人公が彼女の部屋を覗く場面でほろりと来てしまいます。というか、今も思い出して来てます。
もう一つ「愛と死」で興味深かったのは、主人公が巴里から帰ってきて言った言葉。
「巴里にいったところで、人間が居るだけであった」
そして巴里で僕は変わらなかった、と彼は言った。芸術はすばらしかったが、日本にも誇る人物は多くいて、という描写があったので、おそらく「人間が居るだけであった」というのは本当なのだと思う。
けれど、彼は成長したのだ、と言った。旅行中の手紙のやりとりで育まれた「愛」と、帰路の途中で知った「死」によって。
凄い衝撃を受けた。
平易なテーマだなあ、と思って読んでいたのに、一つ人間の大事な部分を知った気がした。
最近、成長という言葉が、どこか「自動詞」のように扱われているのに、憤慨する。
何もしないで、ただ「何か」を待つ人間を私は好きになれない。
かならず物事には「過程」があり「結果」がある。わかりきった事なのに、いまさら強く認識できた。
この「強く認識」出来る事が、創作物のすばらしさだと思う。
ああ、面白い。面白い。面白い!
ISBN:4167110067 文庫 東野 圭吾 文芸春秋 2001/05 ¥620
妻と娘がスキー旅行へ行く途中、事故にあった。
奇跡的に娘は助かったが、妻は帰らぬ人に。
だが、もう一つの奇跡が起こっていた。
妻の意識が、娘の体に乗り移ったのだ。
東野圭吾さんの出世作でしょう。
これの前から、良作、傑作の部類は出していたのですが、一般受けはしてませんでした。私も「秘密」で知った口です。
設定だけを見れば、単純なエンターテイメント作品に思えますが、ただ楽しませて、感動させて、だけでは終わらない。
父親の葛藤や妻の葛藤が、とてももどかしく、胸元をかきむしりたくなるほどです。
この本を読むのは、苦痛です。
いくら面白く、感動が待つのがわかっていても、もう私はこの本の「葛藤」を読みたくありません。
それでも、未読の方にはおすすめです。
ああ、もう本当。思い出すだけでも、嫌だ……あのシーン……
でも、最後のシーンだけは、何度も思い返したい。
妻と娘がスキー旅行へ行く途中、事故にあった。
奇跡的に娘は助かったが、妻は帰らぬ人に。
だが、もう一つの奇跡が起こっていた。
妻の意識が、娘の体に乗り移ったのだ。
東野圭吾さんの出世作でしょう。
これの前から、良作、傑作の部類は出していたのですが、一般受けはしてませんでした。私も「秘密」で知った口です。
設定だけを見れば、単純なエンターテイメント作品に思えますが、ただ楽しませて、感動させて、だけでは終わらない。
父親の葛藤や妻の葛藤が、とてももどかしく、胸元をかきむしりたくなるほどです。
この本を読むのは、苦痛です。
いくら面白く、感動が待つのがわかっていても、もう私はこの本の「葛藤」を読みたくありません。
それでも、未読の方にはおすすめです。
ああ、もう本当。思い出すだけでも、嫌だ……あのシーン……
でも、最後のシーンだけは、何度も思い返したい。
ぴっちで検索してはいけない
2004年5月14日 ぴっちさんはバイト先初出陣らしいです。
どうなるのか気になります。
知人の話によると、血塗れのあの筋のお方からお金をもらえたりするらしいですよ。
そして、リンクありがとうございます。丁寧な言葉使いと、ヴァーサスのレビューにやられて、私もお気に入りに入れさせて頂きました。
近頃本ばかりに気が行ってしまい、映画をなかなか見てない事に気づかされました。
嗚呼、映画が見たい。
話はまるで変わって。
昨日、友人とだらだら喋っておりましたら、榎本加奈子のエロスについて話題が発展しました。
なんだかよくわからないけれど、私は榎本加奈子を見るたびに「エロス」を感じるのです。
知人も「まあ、可愛い」と私の意見に賛同(?)してくれまして、榎本加奈子は「視覚のフェロモン」を持っているという結論に落ち着きました。
同様に、遠山景織子もそんな匂いがします。
どうなるのか気になります。
知人の話によると、血塗れのあの筋のお方からお金をもらえたりするらしいですよ。
そして、リンクありがとうございます。丁寧な言葉使いと、ヴァーサスのレビューにやられて、私もお気に入りに入れさせて頂きました。
近頃本ばかりに気が行ってしまい、映画をなかなか見てない事に気づかされました。
嗚呼、映画が見たい。
話はまるで変わって。
昨日、友人とだらだら喋っておりましたら、榎本加奈子のエロスについて話題が発展しました。
なんだかよくわからないけれど、私は榎本加奈子を見るたびに「エロス」を感じるのです。
知人も「まあ、可愛い」と私の意見に賛同(?)してくれまして、榎本加奈子は「視覚のフェロモン」を持っているという結論に落ち着きました。
同様に、遠山景織子もそんな匂いがします。
ISBN:4101006059 文庫 太宰 治 新潮社 1952/10 ¥300
ドグラマグラに進めません。
太宰治の人間失格を初めて読んだのは、おそらく一六歳頃。
あのときは、いまいち感じる物が少なかったけれど、今読むとなるほど傾倒する人がいるのもわかる内容。
だめ人間ながら、現代のだめ人間とは一線を画するだめ人間ぷりが素敵でした。つまり、カリスマ性のあるだめ人間。
人から何かすすめられる、または誘われて、それを断る事で相手を傷つけるんじゃないか、と思ってしまう。これは常に私も感じて、びくびくとしてきた事なのですが、意外とポピュラーな症状なのかも知れません。
気持ちが軽くなる事は無いし、生き方を変えるわけでもないけれど、不思議と「人間」に親しみが湧きました。
しかし面白い。古典が面白い。
個人的に古典文学を読む事が「偉い」とは思わないけれど、面白くない、と言う人は信じられない。
これは、純粋なファン心理みたいなものか。一種「古典文学」というジャンルであるし。
で、朝になってしまったわけだけれど……
眠い……
ドグラマグラに進めません。
太宰治の人間失格を初めて読んだのは、おそらく一六歳頃。
あのときは、いまいち感じる物が少なかったけれど、今読むとなるほど傾倒する人がいるのもわかる内容。
だめ人間ながら、現代のだめ人間とは一線を画するだめ人間ぷりが素敵でした。つまり、カリスマ性のあるだめ人間。
人から何かすすめられる、または誘われて、それを断る事で相手を傷つけるんじゃないか、と思ってしまう。これは常に私も感じて、びくびくとしてきた事なのですが、意外とポピュラーな症状なのかも知れません。
気持ちが軽くなる事は無いし、生き方を変えるわけでもないけれど、不思議と「人間」に親しみが湧きました。
しかし面白い。古典が面白い。
個人的に古典文学を読む事が「偉い」とは思わないけれど、面白くない、と言う人は信じられない。
これは、純粋なファン心理みたいなものか。一種「古典文学」というジャンルであるし。
で、朝になってしまったわけだけれど……
眠い……
Qちゃん
2004年5月13日 読む本が無くなり、いままで躊躇していた「ドグラ・マグラ」を読み始めようかと考えております。
読書のカテゴリで、やけにこのタイトルを見るので、再び気になって参りました。
前回は上巻の終盤で挫折したので、今回はがんばろう。
同時に、武者小路実篤の「友情」も読書中。
どうもこの人の書くお話(主人公)は憎めない。
こうして、古典を読んでいくと、結局また北村薫さんの「六の宮の姫君」を再読しちゃうんだろうなあ。
なんであんなに面白いんだろう。
-追記-
武者小路実篤の「友情」を読了。
なんて面白いんだ。考え抜かれた描写に伏線。高らかに叫ぶ意見のなんと無理のない事。
なにより登場人物達が全て愛らしい。
これが古典だとは思えない傑作。
もしもシリーズとして、私の頭にあるのが「もし論文を書くとすれば、誰をテーマとするか」
いままでは「菊池寛」を書きたいと思っていたけど、これは対抗馬が出てきたようです。
いや、書かないんですがね。
読書のカテゴリで、やけにこのタイトルを見るので、再び気になって参りました。
前回は上巻の終盤で挫折したので、今回はがんばろう。
同時に、武者小路実篤の「友情」も読書中。
どうもこの人の書くお話(主人公)は憎めない。
こうして、古典を読んでいくと、結局また北村薫さんの「六の宮の姫君」を再読しちゃうんだろうなあ。
なんであんなに面白いんだろう。
-追記-
武者小路実篤の「友情」を読了。
なんて面白いんだ。考え抜かれた描写に伏線。高らかに叫ぶ意見のなんと無理のない事。
なにより登場人物達が全て愛らしい。
これが古典だとは思えない傑作。
もしもシリーズとして、私の頭にあるのが「もし論文を書くとすれば、誰をテーマとするか」
いままでは「菊池寛」を書きたいと思っていたけど、これは対抗馬が出てきたようです。
いや、書かないんですがね。
唄ひ手冥利~其の壱~
2004年5月13日 音楽
椎名林檎、他 CD 東芝EMI 2002/05/27 ¥3,600
あまり耳慣れない曲のカヴァーが多く、あまり人気のないこのCD。
亀田さんと森さんという、日本を代表するアレンジャーを贅沢に使い、亀田さんが編曲を担当した亀パクトディスクと、森さんが担当した森パクトディスクにわけて様々な名曲を収録している。
このCDは、二人のアレンジャーの意匠を楽しむべきである、と思うのですが、どうだろう。
椎名林檎は、あくまで唄わせてもらっている、という立場にいるから、アルバムタイトルも「唄い手冥利」とか、どうだろう。
確かに、こんな素敵なアレンジの名曲達を唄えるのは、とんでもない贅沢、なんて思うんですがどうだろう。
やっぱりギターが好きなので亀パクトディスクが好きです。
でも、森パクトディスクも捨てがたく、なるほど二枚組とはすばらしい、と思うのですが
どうだろう。
yer bluesが大好き。
あまり耳慣れない曲のカヴァーが多く、あまり人気のないこのCD。
亀田さんと森さんという、日本を代表するアレンジャーを贅沢に使い、亀田さんが編曲を担当した亀パクトディスクと、森さんが担当した森パクトディスクにわけて様々な名曲を収録している。
このCDは、二人のアレンジャーの意匠を楽しむべきである、と思うのですが、どうだろう。
椎名林檎は、あくまで唄わせてもらっている、という立場にいるから、アルバムタイトルも「唄い手冥利」とか、どうだろう。
確かに、こんな素敵なアレンジの名曲達を唄えるのは、とんでもない贅沢、なんて思うんですがどうだろう。
やっぱりギターが好きなので亀パクトディスクが好きです。
でも、森パクトディスクも捨てがたく、なるほど二枚組とはすばらしい、と思うのですが
どうだろう。
yer bluesが大好き。
クロスファイア (下)
2004年5月12日 読書
ISBN:433407314X 単行本(ソフトカバー) 宮部 みゆき 光文社 1998/10 ¥860
読了しました。
このカヴァーデザインは、いかがなものか。
面白かった。けど、少々不満も。
なんだかんだで「長編宮部みゆきさん」らしい。作品。
テーマの丁寧な扱いにはいつもの事ながら感服です。私になりに、一つ考える事が出来ましたし、答えも出たような気がします。
この本は答えを提示するのではなく、問題を投げかける物語なのですね。
クロスファイア、模倣犯と読んで、「そして粛清の扉を」の選評のあの部分を読んだとき、二つの物語の中で、宮部さんがどの位置に自分を置いたのかが、なんとなくわかります。
客観をこれほどもてるなんて、凄いです。
エンターテイメント小説としては、後半少々急ぎすぎているような気がしました。
青木淳子という人物像が、突然弱く見えたのは、狙いなのかな。初めて逢う能力者同士、という設定があったとしても、何か根本で納得がいかない。
淳子の三人称一視点であるから、余計にそう思えたのかも。なんだか、青木淳子という人物が、突然わからなくなって、突き放された感じがした。
あと、不自然ではないはずの伏線が、浮ついて見えたのは、なんでだろうなあ……
それでも、面白かったです。
読んでよかった。
読了しました。
このカヴァーデザインは、いかがなものか。
面白かった。けど、少々不満も。
なんだかんだで「長編宮部みゆきさん」らしい。作品。
テーマの丁寧な扱いにはいつもの事ながら感服です。私になりに、一つ考える事が出来ましたし、答えも出たような気がします。
この本は答えを提示するのではなく、問題を投げかける物語なのですね。
クロスファイア、模倣犯と読んで、「そして粛清の扉を」の選評のあの部分を読んだとき、二つの物語の中で、宮部さんがどの位置に自分を置いたのかが、なんとなくわかります。
客観をこれほどもてるなんて、凄いです。
エンターテイメント小説としては、後半少々急ぎすぎているような気がしました。
青木淳子という人物像が、突然弱く見えたのは、狙いなのかな。初めて逢う能力者同士、という設定があったとしても、何か根本で納得がいかない。
淳子の三人称一視点であるから、余計にそう思えたのかも。なんだか、青木淳子という人物が、突然わからなくなって、突き放された感じがした。
あと、不自然ではないはずの伏線が、浮ついて見えたのは、なんでだろうなあ……
それでも、面白かったです。
読んでよかった。