ホムンクルス 5 (5)

2005年10月13日 読書
ISBN:4091870759 コミック 山本 英夫 小学館 2005/02/28 ¥530

 変態だよ。

 だけじゃあれなので。
 やっぱり、この人の書くお話は面白い。しっかりしている。
 だらだらとのばさず、魅せるところは魅せて、流すところは流す。無駄がない。そして、変態的なのだから、魅力的じゃないはずがない。

 一巻立ち読み出来るところがあり、続きが気になれば、二巻まで買うと素晴らしいです。
 ちょっと、三、四、五と引っ張りすぎな感はあるけれど、これからが楽しみなのは、術中にはまっているのだろうか。

 ああ、なんてロマンティックなんだ。
ISBN:4091572111 コミック 浅野 いにお 小学館 2003/05/19 ¥560

 素晴らしいよ。

LOVE

2005年10月13日 読書
ISBN:4396632533 単行本 古川 日出男 祥伝社 2005/09 ¥1,680

 僕は君を知っている。

 二人称なんだか三人称なんだか良く分からないテンションで、がりごり進んでいく。
 目黒、五反田、東京の街が流れるように進んでいく、約四百枚の短編。
 面白かったか? と問われると「うん」と答える。でも、内容はどうだった? と問われると凄く困る。説明しづらい。
 たぶん、感じる本。匂いみたいに、表現する語彙が少ない。

 面白い。うん。
 癖のある文体について行けるかが問題だし、途中で冗長と感じてしまうかも知れないけど、それが一定まで頭の中に溜まってとどまると飽和して気持ちよくなってくる。ランナーズハイに似ているかも。
 文章だけど、えらくスポーティーで攻撃的。

 おすすめは出来ないけど、煙草みたいな嗜好品として、古川日出男は、アリ。
ISBN:4061823426 新書 西尾 維新 講談社 2003/11 ¥924

 壊れてる。

 お兄ちゃんお兄ちゃん言い過ぎで、ほかにも狙いすぎなキャラ造形。青の炎を思いだした。
 病院坂黒猫って名前はどうなんだろう。ブルマーが似合うとか平然と書くセンスもどうなんだ。ありなのか。ありだ。
 と思いつつ、まるでミステリらしくなく進みながらロジカルな解決を見せる様子に唖然としつつ、最終的な「オチ」に愕然とする。
 これは凄い終わり方だ。最近読んだ本の中では一番終わり方が素晴らしい。

 この人にしか書けない、と言うのがあれば、これは当てはまるんだと思う。
 でもやっぱり、生理的にどうなんだろう、と思うところもあるけど。
 そう言うのが苦手じゃない人にはおすすめ。
ISBN:4488017185 単行本(ソフトカバー) 米澤 穂信 東京創元社 2005/07/21 ¥1,680

 犬探し専門の探偵を始めた男の元に舞い込んだ最初の依頼は、失踪した女性を捜すという、なんとも探偵らしいものだった。

 今まで学生ばかりが主人公だった米澤穂信さんのお話。今回は社会人(しかもかなり特殊な経緯を持った)で、少々印象が変わってきます。
 浮ついていた硬筆な文章がしっかりとマッチしている。とはいえ、あの浮ついた感じが好きだった者としては、少し物足りなくもあったりするけれど。

 本は結構分厚いのだけれど、読み進めていくと、短編を読んで居るみたいにテンポが良い。読了感もそんな感じ。
 別々に見えていた事が一つに結ぶ、と言うミステリ的醍醐味も成功していると思う。

 ラストも、米澤穂信らしい終わらせ方。「さよなら妖精」で慣れていたので良かったけど、もし古典部のみを読み進めていたらこれには驚いたかも知れない。

 何か読みたいな、と思えばまずおすすめしますが、ちょっと地味かも知れない。

MISSING

2005年7月20日 読書
ISBN:4575508039 文庫 本多 孝好 双葉社 2001/11 ¥630

 いやあ、話題にはなっていたのだけれど、どうせ村上春樹やら、その辺の洒脱な感じの文章で、ちょっとミステリを味付けしただけなんだろう、と思っていたのに、これは面白い。

 伊坂幸太郎さんのように、文章が軽妙でいて洒脱なのは確かなのだけれど、ちゃんと地に足がついている(伊坂幸太郎さんだと、浮ついている。それが良い)。
 謎は「推測」が多くて、カタルシスが少ないと言えば少ないけど、嫌な感じはしない。終わらせ方も巧いんだろうな、きっと。

 でも、英語タイトルの本はやっぱ苦手なんだよなあ。
ISBN:4198616957 単行本 三島 浩司 徳間書店 2003/06/19 ¥1,995

 突如日本を取り囲み始めたゲル状の物体「悪環」
 それにより発生した病気により、日本は壊滅状態。
 日本は鎖国状態に陥る。その中で生きる「孤児」達。

 こういう、絶望的な状況なのに、さらっとした物語は結構好き。
 なるほど「ただならぬ熱気」を孕んだ作品だと思う。
 全然SFっぽくないけど。

 SFっぽい描写より、何気ない日常の描写が面白かったのは、或る意味問題だ。この人、小説すばるとかで書いたら売れるんじゃ無かろうか?
 集英社さん、無名なうちに買ってしまえ!

切れない糸

2005年7月18日 読書
ISBN:4488012051 単行本 坂木 司 東京創元社 2005/05/30 ¥1,890

 クリーニング屋を舞台に、日常の謎が展開。

 装丁と、前評判、そして極めつけの「サイン本」だったので手に取ってみました。
 まあ、面白いんだろうな、と思ったらこれがもう。

 多くを語らないようで饒舌な文章の妙な生々しさと、登場人物の生き様に何度もほろりとしたり、ほっとさせられたりする。
 主人公がこんなに魅力的な時点で、もう勝ちだ。

 優しすぎるくらいなのに、リアリティが損なわれてないから、心がぽかぽかとするのだな。
 連作短編で、各話が終わるごとにほっと溜息が出た。
 大きな驚きはないけど、ずっと浸っていたい世界。なんだかんだで、こういうのが一番好き。
ISBN:4048736183 単行本 米澤 穂信 角川書店 2005/07 ¥1,680

 古典部の文集「氷菓」が完成するが、ちょっとしたミスで刷りすぎてしまう。
 何とか売りさばこうと奔走する四人四色学園祭。
 かたわら、怪盗十文字が。

 
 相変わらず渋い語り口に浮つく軽妙なキャラクタ達。
 たまらない。
 とはいえ、今回は四人それぞれに視点が与えられているので、少しばかり柔らかい気もする。特に千反田視点は最初、日記かと思ったくらい。

 ばらばらに見える事象が、最終的に謎として結びつき、解決する。それだけではなく、テーマさえも見事一つに重なり作品となるなんて、ミステリの肝である「謎」よりもまずそこに驚いた。
 だからこそ、ミステリ作家というより、青春物の作家として注目されちゃうのだろうけれど。異論はない。
 愚者のエンドロール同様、雄弁には語らないがずしんと来る「動悸」も切なくなる。

 しかし、またこれでしばらく四人ともお別れだと思うと、とても切なくなるなあ。
 まあ、読み返せばいい。次が出るまで。

 興味が出たら、ぜひ「氷菓」「愚者のエンドロール」と辿りましょう。

慟哭

2005年6月22日 読書
ISBN:4488425011 文庫 貫井 徳郎 東京創元社 1999/03 ¥756

 幼女連続殺害事件。警察内部。平行して或る男が宗教へはまっていく。二つのエピソードが、かみ合う?

 新興宗教が上手く表現されてるなあ、とは思いつつも、後半の「ビジネスとしての宗教」の説明はまるで解説書の丸写しみたい。
 はまったのはわかるとして、イコールああまでなるかな、とも首をかしげるよなあ。

 佐伯がなぜあれほど娘に執拗な関心を持っていたのかよくわからないや。自分の生い立ちと重ねたから? にしても弱いと思う。そこが理解できなくて、しかし重要なところで、途中で置いて行かれたような気分になった。
 よく「人間が書けている、書けていない」と言う表現があるけど、この本は間違いなく書けているのだけど、リアリティが無いと言うか。なんだろう。変な気分。

 それでも一気読みさせるに、素晴らしい地の文のテンポは圧倒されて寝不足です。
 貫井さんの本は、もっと読んでみたいな。

星の国のアリス

2005年6月21日 読書
ISBN:4396328915 文庫 田中 啓文 祥伝社 2001/10 ¥400

 だじゃれが無いだって!?

水の迷宮

2005年6月20日 読書
ISBN:433407586X 新書 石持 浅海 光文社 2004/10/20 ¥890

 水族館に、微妙ないたずらがしかけられる。同時に、100万円で金魚を買いませんか? という微妙な脅迫を受ける。奔走する職員達。

 藤岡弘探検隊を思い出す描写が苦手です。
「ここで●●が●●しなければ、●●だったのだ」
 と言う、完全な三人称的な描写なのに、一視点。よくわからない居心地の悪さを覚えつつ、読み進める。

 資料リストにいっぱい水族館に関する本が書いてあるのに、水族館の「魅力」に言及した描写があまり出てこなかったのも不満。人間の描写に筆が行き過ぎて、おざなりになりすぎたところが多い気がする。
 ちょっと飛躍しすぎかな、という論理や推理も首をかしげちゃう。

「BG、あるいは死せるカイニス」が面白かったので、たぶんこの本と私が合わなかっただけに違いない。
 たぶん。
ISBN:409386117X 単行本 市川 拓司 小学館 2003/03 ¥1,575

 雨の季節になったら帰ってきます。
 そんな言葉を残して去った妻。
 残された夫と、子供。その元へ、帰ってくる妻。

 優しい緩やかなテンポの文体が、好き嫌いがわかれるところとは思いますが、私は好きです。
 読書家と自称する人ほど苦手なのでは。
 文学やミステリだけが本じゃないのだよね。こういうのがあっても良いと思う。となんか上から言っているみたいだけど、そんな感じなのだから仕方ない。
 まさに論より証拠、読んでみれば面白い。

 でも、オチはどうなの、と思う。

七回死んだ男

2005年6月15日 読書
ISBN:4062638606 文庫 西澤 保彦 講談社 1998/10 ¥620

 ユーモアミステリーの最高峰と言っても過言ではない。

 一日を何度も反復してしまう少年。
 どれだけ頑張って防ごうとしても、その一日はなぜか毎回祖父が殺されてしまう。

 軽妙なテンポとキャラの良い持ち味。全てがかみ合って物語が出来て、大団円。
 端正で、しかし解説からの言葉を引用すると「変化球」
 至る所に張られた伏線に、騙されないように読み進め、あっさり騙される快感を味わうたびに、マゾじゃないかしらと思う。
 今回はそれがより顕著だった。と言うか「嗚呼……」と声を漏らしてしまうほどに。
 我孫子武丸さんの「殺戮に居たる病」以来の衝撃。

 久々にミステリを読んだな、と言う感じ。大満足。
ISBN:4101457123 文庫 天童 荒太 新潮社 2004/01 ¥500

 タイトルとしては「贈られた手」が一番好きなのだけれど、このお話の中核は何より「祈り」であると思う。
 少しの祈り。本当に少しだけの祈りがみんなの中に在れ、そんな感じ。

 問題のある家庭で次々おこる子供達による心中事件を追う刑事と、児童相談所の職員、そして美術教師の三人を中心に物語は展開していく。それが上手くかみ合って、テーマを語っているのは本当に上手い。
 でも、ちょっと登場人物達が喋りすぎる。実際そんな物なのかも知れないけど、説教くさいといえば、説教くさい。
 全て事実で、全て虚構。何を思えば良いんだろうー。

 読み終わった後、少しだけ優しくなれれば良いと思うのだ。
 長いけど。
ISBN:4087470598 文庫 村山 由佳 集英社 1999/06 ¥400

 今までの私の読書遍歴を考えると、唐突で、なおかつ異質な本。

 従姉妹と同居する羽目になった男の子が、久しぶりに会う従姉妹にときめいちゃう。
 みたいな、べたべたなお話。

 天童荒太さんや、村上春樹さん、宮部みゆきさんを読む同僚から薦められたので、これは面白いのではないかと思い購入。

 もともと、ジャンプノベルだったらしく、口当たりが軽やか。
 しかし、手抜きの無い描写は読んでいてとても気持ちが良い。
 とはいえだ、恋愛小説なんて読み慣れない私には、なんとも赤面するような場面がいくつも出てきて、まいったと手を挙げるしかないのです。

 なんだかんだで面白く、ボリュームも適度でシリーズを揃えちゃいそうな怖さがあります。
 恋愛小説に慣れた方には素直におすすめできる、けどそんな層がこの日記を読んでいるのかと疑問に思う。
ISBN:4889916997 単行本 けら えいこ メディアファクトリー 1999/03 ¥924

 好きだなあ、この人の本。
 でも、昔はギャグマンガとして適当に読み流していたけれど、よく読み直すと、のろけ本なのだともわかった。
 しかし、7年目にしてまだのろけられるのだからすごい。

 果たしてあたしんちで売れっ子になったけらさんの、今の結婚生活がどうなっているのか、気になるところですが、何年目にまた発売されるのか。
ISBN:448801710X 単行本 森谷 明子 東京創元社 2005/03/01 ¥1,575

 辺鄙なススキ野原の中に建つ図書館を舞台に、ささやかな事件が季節の流れのように、緩やかに起こる。

 日常の謎を、図書館という狭い範囲に限定(一部例外あり)して起こし、少し無理矢理だけど華麗な解決を見せる。連作短編ではあるけれど、登場人物が同一であるだけで、関連性はあまりない。
 ほのかな、しかしいけない恋いなんてのも進行しつつ、どこまでも優しい登場人物たちの言動は見ていてほっとする。

 この「恋」の書き方が、女性作家らしく、すごくモズモズとして面白い。
 昔から少女漫画が好きだったので、この人の書く恋愛小説なら読んでみたいな。

 ミステリフロンティアはやはり面白い。
ISBN:4893661922 単行本 渡辺 浩弐 アスペクト 1994/03 ¥1,529

 昔ファミコン通信で連載していたショートショート集。
 著者曰く「思考実験に近い」SF。

 この中に「究極の小説」という話がある。
 インタラクティブで、受け手側が物語を選べる云々、という話なのだけれど、言い換えればそれってブログだなあ、と気づく。
 自分の好きなジャンルを見て、他人も介入できて、まさに先が読めない。
 知りたい単語をクリックすれば、その単語を使っているほかの小説も調べられる、などは、まんまはてなダイアリーである。
 無理矢理なのもあるけれど、どのお話も視線は冷静で面白い。

 3DOが最先端のマシンとして紹介されていたのには笑ってしまったけれど。

BRAIN VALLEY〈上〉

2005年2月20日 読書
ISBN:4048730606 単行本 瀬名 秀明 角川書店 1997/12 ¥1,470

 脳の十年が終わって、いったい脳の何がわかったんだろう。
 心の在処はどこなのか。
 神はどうして人間によって生み出されたのか。

 ストーリーの展開や、場面設定自体は、正直平易。
 ただ、それを装飾する設定やアイディアが一筋縄ではない。
 アブダクション、臨死体験、幽体離脱。一歩ずれればオカルトになりそうなこれらを、うまく科学と絡めて、さらにストーリーにも絡めていく。
 突発的なアイディア一つで出来る物ではない綿密さが、素晴らしい。

 脳の働きの説明が続いてくると、果たして登場人物達の動き一つ一つ、さらにこちらの動き一つ一つまで操られて居るんじゃないか、という気になってくる。
 そう言う意味での文章力は、やはり圧倒的。
 ハードSFとエンターテイメント、そのぎりぎりの位置を保っていて、それがやはり面白い。

 瀬名秀明でなければ書けない、瀬名秀明の小説。
 またこういうの書いてくれないかなあ。

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