ISBN:4048737902 単行本 小笠原 慧 角川書店 2007/09 ¥1,890

 これはまだ、統合失調症が精神分裂病と呼ばれていた時代の、そう遠くない昔の、恋愛小説。

 現役の精神科医作家がえがく! と帯にあって驚いた。精神科医だったんだ。デビュー作からずっと追いかけていたけれど、見落としていた。
 これで、著作が売れなくて生活出来なくなるんじゃないかな、という心配とはおさらばだ。

 台詞が多めだけれど、自然な地の文の筆致はやっぱり好きだ。
 すんなり物語に入り込めて、恋愛小説特有のやきもき感も手伝い、次へ次へ! となってしまう。
 精神病、っていう危ういテーマを扱っているけれど、それを強く表に出していないところも、すんなり入っていけた理由かも知れない。まあ、それが良いことなのか悪いことなのかわからんけど、もうちょっと統合失調症って言う病気についてを掘り下げて欲しかったなあ。

 佐伯という医者が口にする「一年に一度くらいは起こる辛いことを数十回繰り返していくのが、人間の生ってもんだ」みたいな台詞が、やけに印象に残っている。
 帯の「ハッピーエンドなのに、悲しいのはなぜ?」という言葉がじわじわラストに近づくにつれて体にしみていく。
 条件反射的に涙を流させて「良いお話」にするんでは無い、自然と涙が流れる良いお話でした。

 セックスボランティアでもふれられていた障害者との恋愛っていうのは、まだまだタブーであり続けるのだろうけど、ほんの、本当にほんの僅かでも良いから、考える人が多くあって欲しいなあ。
 俺には重すぎて無理だけど。これは逃げじゃないと思いたい。

 おすすめ、だけど、恋愛小説が苦手な人は避けるが吉。

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