ISBN:4488451020 文庫 米澤 穂信 東京創元社 2006/04/11 ¥600

 一癖も二癖もあるがゆえ、人から疎まれる。だから目立たず、騒がず、小市民を目指す小鳩くんと小佐内さんは、互いを言い訳に利用する互恵関係にあります。

 前作、春期限定いちごタルト事件の続編。
 毎日じっくり電車の中で読もうと思っていたら、一日で読了してしまった。もちろんボリューム不足と言うわけではなく、止まらなかった。
 何故だろう?

 提示されるミステリ的な謎も、その解決も、確かに鮮やかではあるけれど、それほど衝撃的でも魅力的でも無い。
 キャラクタの魅力か、と問われると、まあ一理はあるけれど基本的に独りを好む小鳩の一人称で進むため、いわゆる「キャラクタがたっている」というほど他のキャラクタを掘り下げても居ない(実際、登場人物は極端に少ない)。
 ただ、それぞれの一言一言によって、くっきり輪郭が浮かび上がる筆力は見事だけれど。

 じゃあ何故。
 そういった、絶妙な微妙さの上に成り立つ「全体」が儚くて気持ちいいのだ。
 丁寧な仕事、プロの仕事をきちんとしていると思う。
 とくに、前作もそうだったのだけれど、収束へ向かうにつれての盛り上がりが良い。古典部やその他のシリーズには無い、アンニュイな盛り上がり方だと思う。

 意外な収束を見せて、次作への期待も高まりますとも。
 でも、地味目なので、偏屈な楽しみ方が出来る人にはお勧め。

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