火車

2005年1月20日 読書
ISBN:4101369186 文庫 宮部 みゆき 新潮社 1998/01 ¥900

 皆様いかがお過ごしでしょう。
 やはり世界にはまだまだ見た事のない暗部が多くあると実感した昨今。

 たとえばこの本。
 自己破産、その中でもローン破産やカード破産に焦点を当てた作品。
「破産」「借金」という二文字に追われた、二人の女性の人生は。

 自己破産やカード破産をする人間のイメージは? だらしなくて自己管理が出来ていない人間。たぶん、この作品が出た当時はそれが「当然のイメージ」だった。
 たぶん現在でもそれは続いていると思う。

 もちろんそう言う一面もあるのだけれど、あくまで「一面」であることが、結構わからない。
 なんでもそうで、ニュースで伝えられた一面だけをその全体像としてみんな語りたがる。物事ってそんな単純な事か。
 不登校、引きこもり、自己破産、中絶、自殺、殺人。
 その負である「事象」自体を悪だと排他するのは簡単。けれど、そこに存在する「人間」まで決して見ようとしない。
 それも良いとは思う。だいたい、そんな抱えきれるわけがないし。ただし、軽はずみな言葉は無意味なとげを持つ。
 見ようともしないのに、何を論じる?

 個人が個人を保って生活する事なんて、よほど達観した人間じゃないと無理だ。その「場」や周囲に左右されて移ろう。
 じゃあ誰が断罪(司法に限らず)できるのか、って考えていくと結局は民衆なのだから質が悪いね。
 悪循環だけど、他にどんな方法があるのかってわからない。でも、この本がみんなに届けば、少しは良いんじゃないか、と思う。

 そんな傑作。
 なぜこれが直木賞を取らなかったのかと言う謎が、蟠る。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索