ISBN:4062638878 文庫 京極 夏彦 講談社 1998/09 ¥840

 再読。

 ある産婦人科医院の娘婿が密室から失踪する。捜索の依頼を変な形で受ける事になってしまった関口巽。
 彼と依頼人との関係は。そして、一〇ヶ月を過ぎても生まれてこない赤子の秘密は。

 もし今、この人が文芸界にデビューしていても、相当な衝撃だろうな、と思うくらいの、新人離れした巧妙なお話。
 3作目(狂骨の夢)まで読んだけれど、一番すっきりとまとまっていて読みやすい。宗教に関する話題も一番少ないのでありがたい。

 反則ぎりぎりのトリックに、反則的な探偵に、下手すればぽいと投げ捨てられてしまうようなお話だけれど、それに整合性を持たせる、つまり作中の理屈馬鹿「京極堂」のような物語の展開が、京極夏彦さんの良いところだ。

 頭が良く、博識である、ととらえるのは少し安っぽい。
 そんな人間はわんさか居るだろうと思う。ただ京極氏の場合、世の中(というか、世界)のとらえ方が面白い。
 それを的確に文章にするのだから、面白くないはずが無いのだ。
 とはいえ、理解できない人には絶対に理解されないであろう論理でもあるな、と思う。
 個人的に、夢の話のくだりはとても面白かった。

 完全版であるハードカバーの「姑獲鳥の夏」も読んでみたくなった今日この頃。
 しかし、宗教のお話部分が増加されただけのような気もするな。

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