ISBN:4061850458 文庫 東野 圭吾 講談社 1992/02 ¥580

 十字屋敷での悲劇を、ピエロは見ていた。

 久しぶりの東野さん。未読だった物を消化。
 もう10年以上も前の作品だと思うと、感慨深い。

 主軸となるのはオーディオルームで殺された、車いすの少女の父親の事件。そしてなぜか同じ場所で殺されていた父親の秘書。
 不可解な状況。そして犯人が自白を始めるが、その曖昧な証言で、より事件は混迷を深める。

 この事件の書き方がうまいうまい。
 東野さんの言葉を紡ぐテンポは、まるで和食のようだ。おいしくて、それでいてしつこくない。
 どんどん引っ張られて「それでそれで?」と問いかけていきたくなる。謎の小出し、謎の小さな解決。それを否定、それを肯定、読者を欺く描写(しかしそれはトリックではない)。はてはどんでん返し。この流れ。
 素晴らしい。

 東野圭吾さんが読者を非難する理由が、少し頷ける作品でもあった。
 例えばこの作品、読者が「推理」をしなければ、重要な語り部である「ピエロ」の存在意義が薄らいでしまうのだ。
 東野さんはこの作品を読者に「推理」して欲しい事を前提に書いている気がする。

 それが煮詰まって「私が彼を殺した」といった解決編を書かないお話へと繋がっていくのだろうけど。

 で、四時だ。

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