グラスホッパー

2004年8月19日 読書
ISBN:4048735470 単行本 伊坂 幸太郎 角川書店 2004/07/31 ¥1,575

 三人の殺し屋と、一人復讐をもくろむ人間と。
 それらの物語が一つに収束する。

 伊坂幸太郎さんの魅力が何かと問われれば、重力ピエロまでは「少し浮ついた現実」だったのです。
 けれど、アヒルと鴨のコインロッカーあたりから、少しずつベースとなる世界観が現実味を持ち始めてしまった。
 伊坂さんの連ねる言葉は、現実の前であまりに無垢すぎる。

 今回のグラスホッパーもそんな感じだった。
 リアリティが欠如しているわけではなく、リアリティの上で動く人間が不自然すぎる。
 でもこの違和感が面白いと言えば面白いのだけれど、私はちょっと受け付けなくなってきた。

 ちょっと変で、洒脱な比喩表現は、デビュー作の「オーデュボンの祈り」を思い出せた。オーデュポンでしか見られなかったそれが、突然なぜ復活したのかな、と不思議に思う。賞を貰って箔が付いて、制約が無くなったのかな、と邪推。
 でもまあ、そんな難しく考えなければ娯楽作品としてそれなりに面白い作品。
「僕は君のために結構頑張っているんじゃないかな」や「死ぬように生きていたくはない」を踏まえて言う「生きているように生きていたんだ」なんて素敵な台詞もさすがです。
 
 タバコやお酒みたいに、伊坂幸太郎という嗜好が出来そうなくらい、癖のある魅力のある人だ、と再認識。

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