ISBN:4041366038 文庫 夢野 久作 角川書店 1976/10 ¥525

 読むと一度はその精神に異常をきたすという奇書。
 ついでに、表紙も凄い。例の黒い部分はなんの冗談か「角川文庫」とあります。

 この時代風で言う「探偵小説」なんですが、とにかく「トンデモ」ない。
 ウーム。どこから話せば良いやら。

 精神病棟に押し込まれた名前も何もかも忘れた青年が、その精神科の若林先生と共に、記憶を取り戻そうとするわけなのだけれど、若林先生いわく、青年の記憶が戻ったとき、なにやら精神病に対して凄い発展があるみたいな、無いみたいな。

 ここらへんまでは良いんです。
 青年の一人称も読みやすい。
 しかし、後半にいたり、謎の「正木」という教授の論文あたりで、狂ってくる。
 キチガイ地獄外道祭文と銘打って、チャカポコチャカポコ、と経文のような文句が延々と続き、さらに「地球表面は狂人の一大解放治療場」と名付く新聞の対談(と言う名の説明文)、そして胎児の夢を題材にした論文(崩れてはいるが、確かに論文)と続くに至り、徹底的に読者は置いて行かれそうになる。

 でも、確かにそれも面白い。
 脳髄は考えるところに非ずなんていう、とんでもな大哲学も素敵。
 心理遺伝という概念も、面白い。先祖代々受け継いできた記憶が、ふいに現れるときがある、というもの。たしかに、ふいに何も理由無くいらついたり、重要な決断を蹴ったり、と人間説明付かない事が多い。
 そして、危険な遺伝を持つ人間に対し、故意に心理遺伝を起こして殺人を行わせる……

 ここまで読むのに約一ヶ月。たった300ページの小説を……

 確かに面白い。面白いけれど、読みにくい事この上ない。
 このドグラマグラは、空想の学術書を読んでいるよう。気を抜いたら、すぐ眠くなったり別の事を考えていたり……
 たぶん、今の作家さんが同じ事を書こうとすると、色々な人物にさりげなく喋らしたりして、この三倍は分量が要りそう。
 夢野久作は「いなか、の、じけん」のイメージが強かったからなあ。

 で、下巻に突入です。
 確かに面白くはなってきました。

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