屋根裏の散歩者

2004年5月10日 読書
ISBN:4061952021 文庫 江戸川 乱歩 講談社 1987/11 ¥504

 江戸川乱歩と言えば、名を知らぬ人はいないでしょう。
 その乱歩作品でも、比較的有名なこの作品。

 ある男は、すべての遊びという遊びに飽き飽きとしてしまい、毎日を淡々と過ごしていた。
 そんなとき、住処の押入の天蓋がはずれ、屋根裏に出られることを発見した男は、夜な夜な屋根裏を徘徊し、ほかの部屋の様子をうかがうことを、楽しみにするようになった。
 そして男は、ある事を思いつく。
 完全犯罪を。

 まさかこの作品が大正に創られたものだとは思えないでしょう。
 今この粗筋がぽんと目の前に出されたら「おもしろそうだ!」と1000円札が出て行ってしまいますよ。

 主人公の男の心理が見事であるし、うまくいえないけれど、どこか三人称を半音ずらしたような描写も気持ちが良い。
 とんでもなく意味のない動機なのに、それを不自然と感じさせず、むしろ説得力があるというのが凄い。
 謎解きに至って、幾分がっかりとするものの、全体的に読み出すとやめられない不思議な魅力のあるお話です。
 屋根裏を歩き回って、無防備な他人の生活をのぞく、という設定に、多分な魅力があるんでしょうな。やってみたいもの。

(乱歩作品の有名な名探偵、明智小五郎が、まるで物語を終わらせるためだけに存在するように思えることが多々あるのです。それだけが、素直に江戸川乱歩を好きだ、といえない部分)

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